「小学校6年生まで教会学校に来ていた子どもが中学生になって来なくなった」「中学では、日曜日に部活の練習や試合があって教会に来れない」悲鳴のような相談をいただくことがある。でも、本当に部活だけの問題なのだろうか。
 去年10月に開かれたローザンヌ世界宣教会議では、「15の壁」について子ども伝道の分科会で考察された。世界中の宣教戦略を提唱しているルイス・ブッシュ氏によると、4歳から14歳までに信仰の決心する人の割合は、全決心者の75-84%にも及ぶと言われている。非常に高い割合である。けれども15歳になるとキリスト教的価値観から離れて、教会離れが始まるという。世界の多くの国では、日曜日にも活動があるような中学校の部活などは存在しない。にも関わらず、15歳で教会を離れるとしたら、思春期の発達課題とも関連した「全世界」共通の課題であろう。
 また、ローザンヌ宣教会議では「子どもたちを宣教のために整えよう」と提案が出された。従来、子ども世代は宣教の対象として考えられることが多かったが、十代前半の若者を宣教の担い手として育て、クラスの友だちに影響を与えるように送り出すという戦略が奏功している。宣教の担い手といっても、単に割り当てられた奉仕をするだけでなく、子どもたちがアイディアを出し、決定権を持ち、責任を持って運営を任される働きである。まさに、「全教会」の一部である子どもたちが、当然のように宣教の一端を担っている様子が印象的だった。翻って日本の教会では、集会参加を除いて、小中学生が主体的に取り組める活動が少ない。大きな課題が見えてきた気がする。
 それでは、「15の壁」を乗り越えるために、特別な方策があるのだろうか。「バンド」に力を入れている教会もあり、「スポーツ」や「キャンプ」に取り組んでいる教会もある。作って食べる「パーティ」を用いている教会もあるが、どれも絶対的ではない。むしろ、教会全体で子ども伝道に取り組み、教会全体で子どもたちの成長のために祈って、大切に育てていく姿勢が重要であろう。聖書の学びだけにとどまらず、生活のあらゆる分野において神を中心としていくように励ますことができる。福音を矮小化して、単純なプログラムと同一視するようなことがあってはいけない。キリストの福音の全て、「全福音」が若い世代の生活全般に浸透していってほしい。
 このように小さな課題であっても「全世界」、「全教会」、「全福音」の枠組みから考えてみることは、大きな気づきにつながり、しいては宣教全体の大きなパラダイムシフトにもつながる可能性がある。目の前の問題にとらわれたり、過去の経験だけにしばられたりせず、広い視野と新しい視点を大切にしていきたい。

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