21年前、教会で奉仕を始めたばかりの頃、あるご夫妻が「子どもたちが成長したので、子どもの本を教会に献品したい」と申し出てくださいました。それで、教会で子ども絵本コーナーができました。長男がまだ就園前でしたので、たくさんの絵本を読み聞かせることができ、とても感謝でした。そうこうしているうちに、たくさんのご家庭から、「うちの本も使って」と申し出が続き、合わせて1000冊以上になりました。私も中々動けない時期でしたから、「家にいながらにしてできる子ども文庫をスタートしよう」というビジョンを与えられて、教会の敷地にプレハブの6畳くらいの小屋を立て、毎週土曜日「レインボー文庫」がスタートしました。時間は、確か午後1:00から4:30頃だったと思います。

 

 ちょうど、町田市で団体貸し出し制度があり、町田市立図書館の本館まで車で15分くらいでしたので、3ヶ月おきに100冊新しい本をお借りして、話題の本を借りてくるようにしました。地域には2週間に1度の割合で「移動図書館」が来ていましたが、歩いて行ける範囲にはなかったので、1つのチャンスかと思いました。教会の敷居を低くして、誰にでも来ていただこうと考えたのと、本を借りていった方は、必ず返しに来て下さるはずだから、1回限りにはならないだろう、と期待しました。

 

 確かに「お話会」が子ども図書館で開かれていた頃でもあり、教育に熱心なお母さんが子どもを連れて遊びに来てくれました。ところが、子どもは、当時からマンガとか、「ぞろりシリーズ」や「ずっこけシリーズ」などを除いては、あまり本を読んでくれないのです。特に、世界の名作シリーズのような本には、ほとんど手をのぼしてくれませんでした。かなり閑古鳥のなくような子ども文庫だったと思います。そしてどちらかと言うと、まじめな本好きの低~中学年の女子が多く、元気な男子は少なかったと思います。

 

しかもみんながバラバラの時間帯に来るので、まとまって何かもできない。また、何週間も借りて行ったまま返さない人もいて、催促をするのもすごく手間がかかりました。特に、図書館から団体貸し出しで借りた本は、返却期限が過ぎると、同じ本を買って弁償しなければならないのです。そんな大変な割には、聖書紙芝居を読むことを除いてはほとんど直接伝道もできず、クリスマス会などに来た子どもたちに続いて教会に来てもらうための居場所作り、のような感じでした。しかも、子ども文庫から教会学校につながった人もほとんどいませんでした。

 

 つらかったのは、一度スタートすると、中々こちらの都合で休むことができなくなったことです。幼稚園の運動会で私がいなかった日に限って、初めての親子が訪ねて来られて「せっかく来たのに、文庫がお休みだった」となって、不特定の地域の方々を対象とする大変さを実感しました。また、奉仕者を御願いするのも大変でした。教会学校で奉仕しておられる方々は、月曜日から金曜日までは仕事をしているか、学校で勉強している方が多く、土曜日が唯一の休みの日であり、土曜日と日曜日の両方に奉仕を御願いすることはできませんでした。それで、4人の婦人の方々に一か月に1度だけお手伝いしてくださるように御願いしました。そうすると、子どもたちも毎週来るわけではないので、中々顔と名前が一致せず、いつまでたっても余り親しくなれないままでした。

 

 それにしても、ずっと待っているだけでなく、やはり出て行って伝道しなくては、という気持ちが与えられて、何年か後には近くの公園で遊んで、それから教会にもどっておやつ&読書タイムみたいな流れに変えました。すると、今度はたくさんの子どもたちに会うことができるようになったのですが、「公園で遊んでいる子どもたちを教会に連れていくのか」みたいに疑問視する声も出ました。(その辺の事情は次回にまとめます。)

 

 大体8年ほど経って、教会の会堂を取得することができました。ちょうど新会堂の近くに、新しい図書館が建設されたこともあり、土曜日の子ども文庫は閉鎖されました。本はしばらくの間、礼拝中などに、教会員の子どもたちが読んでいたこともあったのですが、礼拝中に本を読むのはどうか、という声も出ました。そうこうしているうちに本はどんどん痛みが激しくなって、比較的きれいで新しい200冊くらいを除いて、廃棄処分になりました。

 

 今振り返ると、ちょっぴり甘酸っぱい「子ども伝道失敗記」です。でも何よりも、私自身にとって、子ども伝道の基本を教えていただいたよい体験になっていると思います。それは、「考えているだけでなく、とにかく祈ってやってみる」ことを教えられたからです。そのスピリットは今も変わりません。

 

 それに失敗からも大きな恵みをいただいたと思います。それは、私も子どもたちもたくさんの本を読むことができたことで、特に子どもの絵本を自由に買えるような経済状態になかった私たち家族にとっては、とても助かりました。子どもも「読書感想文コンクール銅賞」をいただくことができました。全てを益としてくださる神様に感謝しています。

 

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