多くの教会で、ユース世代のバンドが生まれてほしいと祈っておられると思います。私たちの教会でも、そのような祈りが積み重ねられていました。一人の姉妹がそのビジョンを共有してくださり、中学生バンドが始まりました。といっても楽器が好きなメンバーが多かったわけではありませんでした。一人の男子中学生がギターもキーボードも上手でしたが、他のメンバーが全然バンドに興味がなく、彼の賜物が生かされていませんでした。それで、ベースが弾けてバンド大好きな成人の姉妹が他の中学生に「一緒にバンド始めない?」と呼びかけた所、2人の女子中学生が「やりたい」と応じてくれました。それで中学生3人と成人1人の4人のバンドが始まりました。
といっても、全くゼロからの出発で、教えてくれる人がいませんでした。それで、既にバンドをやっていた他教会のゲストにお願いし、1か月に1度教えに来ていただくことになり、初めてのバンドが誕生しました。その時は、今から10年以上も前で、まだ教会にドラムもありませんでした。けれども、教えに来てくださったゲストの方のご厚意で、しばらくの間、ドラムセットをお借りできることになり、私たちは、飛び上がって喜びました。
練習は日曜日の午後、2時間ぐらいでしたが、最初の立ち上げの時から、課題は山積みでした。まず、新しく加わった2人の姉妹が両方ともドラムをやりたいと希望しました。といっても、ドラムが2人というわけにもいかず、一人がキーボードにまわることになったのですが、傷つきやすい世代なので、女性スタッフがすごく気を遣っていたことを思い出します。また、1か月に1回だと上達しないので、もう1回は自主練をしようということになったのですが、3人のメンバーが皆違う中学に通っていたので、学校行事の日程が違っていたのです。それで、練習の日程を調整するのも大変でした。
それでもさすが若い世代なので、短い期間で形ができてきました。それで、ただ練習しているだけでなく、奉仕をしようということになり、1か月に一度、教会学校の奏楽でデビューすることになりました。彼らは、すごく頑張ったと思います。初めての奉仕の日、私は涙が出るくらい感動したことを思い出します。
ゲストの方も、遠くから毎月礼拝後に練習にかけつけてくださり、一人一人にていねいに教えてくださって、本当に感謝でした。女性のスタッフの方も、バンドのために喜んでささげてくださいました。それなのに、初めて1年もたたないうちに、バンドが空回りするようになってしまいました。
直接的なきっかけは、男子中学生がもっと本格的にプロを目指したい、と思っていたのに、他の姉妹たちが趣味のレベルにとどまっていて、なかなか技術的に向上しなかったので、物足りなくなって「バンドを抜けたい」と申し出たことでした。けれどももっと根本的なこととしては、表面的なバンド活動にとどまっていて、コミュニケーションと信仰の一致が欠けていたのだと思います。また、それぞれの中学生生活が忙しくて、バンドだけに時間を使えないこともあったでしょう。かなり温度差もありました。また、基礎となるはずだった中学生会とバンドがうまくリンクできてなかったこともあります。教会学校の奉仕ということで、選ばれた小学生の賛美が、彼らが本当にやりたいタイプの音楽と違っていたのかもしれません。
結果として、男子中学生は音大を目指すことになり、また超教派のライブに奉仕者として参加するようになりました。2人の女子はそれからまもなく、それぞれの事情で礼拝にも出席しなくなりました。当時のことを思い起こすと、私自身は直接的に関わってはいませんでしたが、もっともっと暖かいフォローが必要であったのに…と申し訳なく思います。
けれども、すばらしいことに、あれから十数年たった現在、主は全く新しい中高生バンドを起こしてくださり、毎週教会学校で奉仕をするようになりました。また、成人バンドも2組与えられ、毎週違ったバンドが礼拝で奉仕できるようになりました。自前の楽器も与えられ、少しずつ機材も充実してきました。
この原稿を書かせていただきながら、改めて教えられたのは、私たちは一度に一歩しか進めないことです。とにかく信仰をもって一歩進む時、主は道を開いてくださり、次の二歩めも歩める力を与えてくださいます。そうやって気がついてみると、十年以上たって、本当に成長させていただくことができたと思います。現在、バンドも中高科も充実しているのを感じることができることは、感謝です。
先日のキッズキャンプでは、日頃賛美リードをしてくれる高校生が奉仕できない集会で、初めて小学校バンドがデビューしました。ドラムとキーボードを担当してくれたのは、小学校4年生と6年生でした。現在の教会学校では、中学生になると、全員が楽器または賛美リーダーにチャレンジするようになり、みんなが自然に一致して取り組むことができているのが、祝福の秘訣だと思います。
バンドやスポーツなどに取り組む時に、できるだけ同じくらいのレベルで一緒にスタートすることは大切だと思います。非常にデリケートな世代なので、技術的に差があり過ぎると、モチベーションが下がってしまうことを、何回も見てきました。後は、練習は休まない、などと強制しないことでしょうか。期待はしても、プレッシャーをかけ過ぎないことが大切なような気がします。
バンドを立ち上げてくださった姉妹は、バンド終了後、「奉仕に空しさを感じる」と正直に分かち合ってくださいました。誰も失敗と言わなかったのですが、ミニストリーを立ち上げて、思ったようにいかない場合、ショックが後に残りやすいことを感じました。前回も書いたのですが、一人が立ち上げるのでなく、複数の同労者が与えられるように祈ることが大切です。でも、最初の一歩があるからこそ、次の人が継承できるのです。余り深く考えすぎて、条件が完璧に整うまで待とうとすると、最初の一歩が踏み出せなくなります。主に祈って、聖霊の力と導きを与えられたら、結果は主にゆだねて、気軽に踏み出してみませんか。リスクも大きいかもしれませんが、奇跡を体験することができるのも、奉仕のパイオニアの方の特権だと思います。その姉妹は、今は別の奉仕に生き生きと携わっておられ、感謝です。
(聖書の光 171号)