「私が飢えて、アポロが水を注ぎました。しかし、成長させたのは神です。それで、たいせつなのは、植える者でも水を注ぐ者でもありません。成長させてくださる神なのです。」(コリント人への手紙 第一3:6-7)
この御言葉はコリント教会を開拓設立したパウロとそれを引き継いで成長発展させたアポロのことが言及されているところである。教会の成長発展にとってたしかに人が重要な鍵を握っているのは事実である。しかしそれが最も重要なことではない。「成長させたのは神です」「成長させてくださるのは神なのです」とあるように、教会の中で働き成長発展へと導いてくださっている神ご自身に目を向け全ての栄光を神に帰していくことが何より大切なことではないだろうか。
「成長させたのは神です」という信仰に立つとき、教会間にある他教会との比較、あるいはクリスチャン間の比較から解放されて、つまらない優越感や劣等感にとらわれることもなくなり、それぞれの教会やクリスチャン一人一人が自分らしく生き生きと生きることができるのではないだろうか。神のご計画に従い神の御旨にかなう教会となりクリスチャン一人一人となることが教会教育の目標となるべきであると私は考えている。
教育というとき、一般教育であっても教会教育であっても問題となり課題となることは管理監督の強化をより強調する教育理念と、本人の自発性や自由意志を強調する教育理念である。もちろん真の教育にはそのどちらも必要であり、どちらか一方だけで良いということはない。しかし現実の問題としてどちらかに傾いて強調するようになることは避けることができない。私の奉仕している教会はバプテスト教会であり、会衆政治の教会で信徒一人一人の自由意志や自発性が尊重される特色を持つ。私は誰かから「渡部先生はどのような牧会をしているのですか」と聞かれることがあると、「放牧にしています」とか「放し飼いにしています」と答えることがある。冗談とも本気ともつかないような答え方をしてしまうことが多いが、「成長させてくださるのは神であり」、「羊の大牧者はイエス・キリスト様である」との信仰の確信からきていることも事実である。
私の教会教育理念の一つの特色は個人の自発性や自由意志を尊重することにある。「罪を犯す以外は何をしても良い」とか、「どんな人でもあるがままで受け入れ愛していく」というようなことが強調されている。これは教会教育理念として神学校で学んだとかいうものではなく、私自身の個人的体験に基づくものが大きい。中学3年生の時、家が破産し一家で夜逃げをし親類の家に預けられたり、転々とする中で、「あるがままの私をそのまま受け入れてほしい、愛してほしい」という心の叫びを発していた。そのことが基本的な人間関係の形となり教会教育理念のスタイルとなっていった。
私には子どもが3人いるが渡部家の家訓として5つのことを強調してきた。ジョナサン・エドワーズ家と、米国の石油王ロックフェラー家の家訓に「あなたの父と母を敬え」を独自に加えたものである。教会も神の家族と呼ばれていることもあり、渡部家の家訓は同時に、私の教会教育理念ということもできる。
1 聖日礼拝厳守
神さまを生活の第一にすることの目に見える形の実践は聖日礼拝厳守である。生活形態が多様化し聖日礼拝を厳守することがむずかしい時代になっている。しかしどんな時代であれ状況であれ、聖日礼拝を厳守する姿勢はあらゆる教会教育の中でも特に大切なことではないだろうか。我が家では保育園、小学校、中学校、高校、大学それ以上にどんな行事よりも礼拝を優先して厳守するようにしている。現在は夕礼拝を行い、小中高生の学校行事や日曜日仕事のある方も礼拝できるようにしている。
2 十分の一献金
「十分の一をことごとく、宝物倉に携えて来て、私の家の食物とせよ。こうしてわたしをためしてみよ。-万軍の主は仰せられる。わたしがあなたがたのために、天の窓を開き、あふれるばかりの祝福をあなたがたに注ぐかどうかをためしてみよ。」マラキ書3:10「あなたの宝のあるところに、あなたの心もあるからです」マタイ6:21十分の一献金の習慣を子どもの頃からもっている子どもは幸いである。十分の一献金の祝福は大人になって給料を得る時まで待つ必要はない。幼児でも小中高生でも、病気で働けない人や生活保護の方、高齢者、年金生活者等誰でも実践する人は祝福を受けるのである。献金をきちんとささげないでいくら学んでも奉仕しても祝福はもれてしまう。
3 牧師を敬い、牧師に従う
これはロックフェラー家の重要な家訓のひとつであったそうだが、韓国における教会と信徒の重要な鍵であり、日本の教会との違いもそこにあると言われている。牧師を尊敬し、牧師に従うことを通して神は教会を祝福し信徒を祝福してくださる。
4 クリスチャン同士の結婚
結婚を希望しない男女が増えているといわれ、クリスチャン同士で結婚しクリスチャンホームを築く青年男女も少なくなっている。信仰の継承ということを考えるとやはりクリスチャン同士の結婚が大切である。相手の方がクリスチャンでない方は生涯かけてクリスチャンになるよう祈り、子どもたちを主のもとへと導くべきである。
5 親を敬い、親に従う
「あなたの父と母を敬え」これは第一の戒めであり、約束を伴ったものである。すなわち、「そうしたら、あなたはしあわせになり。地上で長生きする」という約束である。エペソ6:2-3これが幸福になる鍵である。
(2004年5月発行 No.31掲載)