現代の子どもを取り巻く問題については、複雑にからみあっており、限られたスペースではまとめきれない。それで、ここでは、いわゆる身体的・精神的に病的または、特異なケースを除き、一般的な課題・問題点だけを指摘したいと思う。
- 家庭に関する問題
- 複雑な家庭から来る問題…離婚を経験した親が増えるにつれて、シングルマザー、或いは血のつながっていない複雑な構成の家族が増えている。
- 虐待…親自身の心の不安定と、親子が密室になりやすい状況、近隣との人間関係が希薄なことなどにより、虐待又は一歩手前まで進んでしまう家庭も少なくない。
- メディア漬け…テレビ・マンガ・DVDなどを合わせて、1日に6時間以上も過ごしている子どもも少なくない。幼児だけでなく、小学生・中学生・高校生までも同じ状況にある。
- 引きこもり…精神病疾患以外で、6ヶ月間以上自宅に閉じこもり、学校や仕事に行かない状況が持続しているケースが増えている。家庭内暴力を伴ったりする場合が多い。
- アダルトチルドレン…親と共依存の関係になり、自分が親から受けた傷をそのまま、子どもに受け継いでしまっているケースが多い。
- ゲーム脳…ゲームを長時間すると、脳の活動状況を表す脳波のベータ波が前頭前野から出にくくなり、キレやすく、集中力がなくなりやすくなる傾向がある。
- 有害なビデオ・DVD…ホラービデオ、オカルトビデオ、アダルトビデオ等、青少年に有害なビデオ・DVDによる悪影響が増えている。いわゆる「おたく化」現象も指摘されている。
- 学校に関する問題
- いじめ・仲間はずれ…学校において、攻撃的な子ども、「キレる」「ムカつく」子どもが増加している。仲間はずれやいじめに悩み、自殺に至ったケースもあるし、友だちを死に至らせてしまったケースもある。
- 不登校…家庭や親からの分離不安のある子ども、神経症的な不安や恐怖感に悩まされている子ども、非行傾向のある子ども、教師や友だちと関係悪化した子どもなど、理由は多岐に渡るが、不登校の子どもも増えている。
- 学級崩壊…集団行動が取れない子どもが増え、授業が成り立たなくなるケースが一般的にみられるようになった。また、多動・衝動的な子どもの数も増えている。
- 社会との関係に関する問題
- 人間関係の希薄化…幼少時から長時間1人でゲームで遊ぶことにより、健全な人間関係を持ちにくくなっている。ゲームに熱中してバーチャルな世界に閉じこもり、対人関係が希薄になりやすい。
- 窃盗…窃盗の中でも万引き、自転車盗、オートバイ盗、ひったくりなどは、初発型非行と言われ、少年非行の7割以上を占めている。
- 恐喝…人を脅して金品をまきあげるなど、いじめの手段になっている場合もある。
- 薬物…シンナー・覚せい剤・麻薬などは、暴力団によって高い値段で取引されている。家出少女が中毒状態にされて、売春させられるケースもある。
- 暴走…大音響の爆音とともに集団でバイクで走り回る暴走行為が見られる。
- 暴力行為…1対1の暴力行為の他、複数で1人に暴行を加えたりする傷害行為などもある。オヤジ狩りなど、ホームレスをおそって暴力に及ぶこともあった。理由無き暴力とも言われ、ただむしゃくしゃとして暴力行為に及ぶケースもある。
- 性的非行…アダルトビデオやポルノ雑誌を見て、代償的な満足をえている男子はかなりの数にのぼる。援助交際と称して、金品と引き換えに進んでナンパされる女子も少なくない。その他、幼女をつかまえていたずらをする強制わいせつ、電車等での痴漢行為、女性をおそってレイプするケースなどがある。
- 性体験の若年化…結婚前にバージンブレイクするのが当たり前という風潮の中、性の初体験が若年化している。性病に感染したり、中絶して不妊の体質になってしまうケースも多い。
問題解決への提言
1.乳幼児期から、信仰に基づいた豊かな心を育む
乳幼児期の家族の問題が、思春期になって表面に現われ出てくる。乳幼児期には、家族同士の信頼・愛など心のきずなをしっかりと築くことが大切である。家族の模範を通して信仰を養い育てることは大切であるが、「いい子でなければ受け入れられない」律法的な雰囲気に支配されることのないように注意する。
2.幼児・児童期には同年齢児・異年齢児との遊びの時間を確保する
対人関係能力は、集団遊びなど実際の集団活動の中でしか育たない。年齢の異なる友だち同士を含め、なるべく大人数の様々な友だちと遊ぶ機会を持つことが大切である。また、幼い頃からけんかを自分たちで解決していくことを通し、人間関係の問題解決能力を身につけることも大切である。
3.自然とのふれあい・豊かな体験の機会を提供する
狭い意味の勉強だけではなく、自然とふれあい、スポーツをしたり、芸術に親しんだり、園芸をしたり、料理を作ったり、ボランティア活動をしたり等幅広い豊かな体験を持つことによって、本物の生きる力を育てることができる。
- 教会の中で祈られて育てられる
教会は神の家族である。幼い頃から共に礼拝をささげ、教会学校でみことばを学び、祈られて育つ中で、子どもは信仰をもち、霊的に成長していく。さらには信仰告白に導かれ、デボーションによって強められ、共に主に仕えていくことができる。
- いのちの尊さを教える
現代社会では、仲間はずれにされて小学生が自殺したり友だちを殺したりするなど、いのちが軽視されている。いのちの尊厳、生きる目的、神の定められた性、死ぬことの意味、永遠のさばきなど、聖書に基づいたいのちの教育が必要とされている。