今日ご紹介したい教会はビレッジ教会です。位置的にはイリノイ州の最北端のガーニ-という郊外の町(ウィスコンシン州との境近く)にある数千人規模の教会です。前回紹介させていただいたウィロークリーク教会と比べると、規模としては十分の一くらいの大きさだと思いますが、乳幼児から成人科まで一貫した教育プログラムの充実している教会です。トリニティ神学校の教会教育の教授と長年住んでおられる地域の方々に「教育の充実している教会」を推薦していただいた時、共通して真っ先に名前のあがった教会でもあります。

 

―ビレッジ教会―

1.ビレッジ教会の歴史と特徴

ビレッジ教会の開拓は、トリニティ神学校の宣教学の授業で「教会開拓の可能性の高い地域」の調査をしていたレークビュー教会副牧師のハーベガー牧師に導かれて始まりました。65人のメンバーが中心となって、1983年の1月から週一回の聖書研究を始め、同年イースターに近くの高校を借りて第1回めの礼拝を持った時には、101人の出席があったそうです。その後もレークビュー教会の枝教会として着実な歩みを続けましたが、礼拝する場所は高校体育館やダンスホール、小学校や他教会の礼拝堂など、転々と移り変わっていかなければなりませんでした。土地を買って自前の礼拝堂を献堂することができたのは、1988年の5月でしたが、当時の礼拝出席はすでに300人を越えていたそうです。現在は、教会開拓20周年記念プロジェクトの一貫として、隣の土地も買って増築プランを計画中です。日曜日9時、10時半、土曜日夕方6時からの週3回の礼拝がもたれ、のべ三千人前後の人々が出席しています。白人を主要メンバーとする伝統的でオーソドックスな教会です。

 

2.ビレッジ教会の子どもプログラムI(キッズゾーン)

ビレッジ教会の教会学校は、ナースリー科(0~2才)、幼児科(2~3才)、幼稚科(3~6才)、下級科(1~3年生)の4つのクラスに分かれ、日曜日朝8時30分~10時、10時~11時30分の二部制で持たれています。奉仕者のお子さんなどは、一部と二部と両方出席するそうで、一部と二部はみことばも活動もメッセージも全て全く違うということに驚きを覚えました。(全体の礼拝のメッセージ・賛美などは三回ともほとんど同じだそうです)ナースリー科ではさらに0~16ヶ月のベビークラスと17ヶ月以降の嬰児クラスに分かれています。

ベビークラスでは、賛美、手遊び、御ことばが中心で、嬰児クラスでは聖書物語、賛美、そして様々な遊びが持たれます。ベビークラスも嬰児クラスもいわゆる保育が中心で、たくさんのプログラムが次々と持たれるというより、ほとんどの時間、保育者に抱っこされてゆったりと時間を過ごしています。

幼児科(2~3才)からは、より組織的な年間カリキュラムに基づいた教育プログラムが始まります。幼児科では全体テーマとして創造主なる神について学びます。聖書物語、絵、工作、ごっこ遊び、手遊び、パペットショーなどがバランスよく組み合わされています。奉仕はリーダーと呼ばれるプログラムを進めていく奉仕者と、シェパード(羊飼い)と呼ばれる子ども担当牧会者がチームで担当します。

幼稚科(3~6才)は、全体テーマとしては友だちであるイエス様について学びます。絵、ごっこ遊び、工作、絵本タイム、パズル、ゲームなど様々な活動が持たれ、その後、スモールグループにわかれて親しい交わりをもち、お互いのために祈り合います。祈り合う時間はシェパードが導き、メッセージや賛美、パペットショーなどはリーダーが導きます。キッズゾーンのスケジュールは、かなり細かく管理されていて、下記の通りです。

 

 

 

 

 

  

 

3.ビレッジ教会の子どもプログラムII(ゾーン)

4~5年生は、男子科と女子科に分かれ、九時から十時まではゾーンクラス、それ以降が男女合同でゾーン礼拝が持たれます。ゾーンクラスでは聖書研究、祈りと交わりが中心です。聖書研究はトピック中心の聖書研究法が用いられます。これ以外にも交わりや奉仕、伝道のプロジェクトに強調されています。ゾーン礼拝の時間は男女合同で礼拝しますが、そのシェパードにあたるのが、主に高校生の若いメンバーです。礼拝の中に劇・賛美・グループプロジェクト・体験学習による聖書の学びなどが含まれます。

4.子どもプログラムの奉仕者

 これだけ細かいグループに分かれていて、たくさんの子どもたちがいて、しかも二部の教会学校のプログラムが完全に独立しているとなると、一体誰が準備・奉仕をしているのだろう…と思うのですが、ヘルパーはやはり中学生のうちから募集されていました。興味深いことに、教会学校の奉仕者というと、日本ではほとんど教師に限られてしまっていますが、9種類の奉仕者が協力して奉仕をしていました。

①プロジェクトコーディネーター

子どもたちは、いきなり賛美やメッセージではなく、気軽に始められる自由遊びからスタートしていましたが、その時間帯がプロジェクトタイムと呼ばれ、プロジェクトタイムコーディネーターと呼ばれるスタッフがその時間の担当をしていました。これは、早く到着した子どもたちが退屈することなく、しかも約二百人くらいの小学生に対して十前後のプロジェクトが用意されているので、みんながそれぞれ好きなプロジェクトを選べて楽しそうでした。ゲームといっても市販のパズルやボードゲームなどで、特別に手作りのものではなく、レッスンプランとは関係がなかったのですが、ああいう楽しいプログラムからスタートすれば、遅刻する子どもが減るだろうし、同じゲームや工作をくりかえし使えるので、準備にもそんなにお金と時間がかからないと感じました。

②賛美リーダー

プロジェクトタイム終了後、コーナーはさっと片付けられて全体の賛美が始まりましたが、賛美は賛美リーダーによって導かれていました。賛美リーダーはTシャツなどのラフな服装で、親しみやすい表現とジェスチャーで司会を担当していました。賛美の伴奏はバンドで、時にはCDも使われていました。

③技術係

技術係は、どちらかというと裏方の奉仕で、バンドのセッティング、音響、照明、録音、機材の片付けなどを行っていました。中高生でも比較的取り組みやすい奉仕だと思いました。

④カリキュラムライター

ビレッジ教会では、既成のカリキュラムを使わず、独自のカリキュラムを使っていらっしゃるそうですが、毎週のレッスンプランはカリキュラムライターと呼ばれるスタッフの方が書いているそうです。この奉仕は表面には出なくても、コンスタントに大変な労力を必要とする奉仕であることを感じました。

⑤クリエイティブプログラムリーダー

クリエイティブプログラムリーダーは、カリキュラムライターと協力して、劇や人形劇などの脚本を準備したり、演じたりしているそうです。最初は楽しそうな奉仕(?)だと思いましたが、毎週毎週、新しい脚本を書いて、キャストを募集して、練習を指導し、全体のプログラムを作っていくのは、1人でメッセージを語るよりもずっとてまのかかる大変な作業であると思いました。見学させていただいた週のテーマは「世の光」でしたが、その日のスキットの原稿は、一部のためのスキットでA4で11枚、二部のためのスキットもA4で5枚ありました。

⑥シェパード(羊飼い)

分級は羊飼いと呼ばれる担当者が担当していました。小学生8~10人に担当者1人の割合で小グループが運営されていました。分級は小学生下級だけで十数グループあったのですが、その内容は統一されていました。

⑦教材準備担当者

分級の教材等は、カリキュラムライターの人が準備した毎週のレッスンプランに合わせて、教材準備担当者が分級のグループの数、子どもの人数分を計算して準備し、前の週の水曜日までにシェパードの週報ボックスにそろえて入れておくそうです。こういう裏方の準備があるので、シェパードは用意された教材とマニュアルを読んで、そのまますぐ奉仕ができるのだと思いました。教材とマニュアルとを合わせてA4で五枚もありました。

⑧ティームコーディネーター

ティームコーディネーターは、保護者へのニュースレターの準備、新来会者の受け付け、保護者への対応、休むスタッフの穴をうめる臨時奉仕者との連絡などを担当していました。クラス数、スタッフ数が多くなると、こういう全体の連絡係のような人の存在が大切になることを感じました。

⑨子どもミニストリー担当牧師

これら九種類の奉仕者のほとんどは、信徒によって担当されていましたが、全体をまとめておられたのが子どもミニストリー担当牧師の方でした。新しい奉仕者の募集、研修なども担当しておられました。

 

ベビークラスから成人科まで合わせるとサンデースクールの奉仕者だけで数百人の規模であるということでした。この他にも水曜日の夜に持たれるパイオニアクラブやボーイズクラブ、火曜日夜の中学科などと合わせて奉仕者が何人いるのかはうかがうことができませんでしたが、かなり多くの方々が積極的に教会教育に関する奉仕に加わっておられる様子を見せていただくことができたのは感動的でした。通年の奉仕は無理でも、夏休みの2ヶ月限定の受付奉仕、夏休みの間数日もたれるバックヤードバイブルアドベンチャーと呼ばれる夏季学校のクラフト準備の奉仕等、中学生が気軽に奉仕を体験できるようなシステムが整備されていると感じました。何といっても子どもを育てるためには、子どもを育てるスタッフを育てていく必要があることを感じました。ボランティアの奉仕者に加えて、「週に10時間働いている」のようなパートタイムのスタッフの方々もおられました。もっとも週に10時間といっても、実質的な準備の時間なども入れると軽く2倍以上にはなる、ともおっしゃっておられましたが、そういう信徒リーダーの方々の働きがないなら、とてもこういう大きな組織はまわっていかないだろう、と思いました。

 

5.クリエイティブプログラムの実例

*テーマ聖句 詩27:1

*(太い綱が置いてある。)みんな、この上を歩いて渡れる?(簡単にやってみせる)

*(タマゴを綱の上に置く。)じゃあ、これだったら?(注意深くタマゴをよけて歩く)

*じゃあ、暗かったとしたら?(電気OFF,こんなのできるわけないじゃんね)

*さて、キッズサーカスチームのメンバーを紹介します。(数人の子どもたちが、コスチュームを着て空中回転、バック転などを華麗に披露する)…大きな拍手

*(途中で電気が消えてしまう)あら、暗くなっちゃった。続けられるかしら?

*(子どもたち口々に)できるわけないよ。

*(会衆の子どもたちに)じゃあ、次に行きたいんだけど、誰か手伝ってくれる人いる?

*(ボランティアの子どもが前に出てくる。急に暗くなって誰かとぶつかる。悲鳴)

*どうしたのかしら?(電気がつく。前に出てきた子どもが、ケーキを持った人とぶつかって顔中がケーキだらけになっている)

*(ケーキを持った人が)だって見えなかったんだもの。

*そう、見えないと何があるかわからなくて、困るよね。さあ、向こうへ行って顔を洗っていらっしゃい。

*(パワーポイントに質問が書かれている。)神さまの光を受け取って見えるようになるためには、何が必要なの?

*(パワーポイントに)①祈り、②礼拝、③聖書、④教会、と答えと絵が順番に映し出される。続いて、暗唱聖句も映し出される。司会者が1つずつ説明していく。

*(司会者がまとめて祈って終わる)

 

(2004年12月発行No.32掲載)

PDFデータ