小さな声の会とは
「小さな声の会」の活動をはじめて7年目になります。
皆様のお祈りとご支援を感謝します。
「小さな声の会」は虐待を受けたり、引きこもりを経験するなど、生きづらさを覚えている子ども達への支援をしています。
毎月の会報でその報告をさせていただいています。
先日、名古屋家庭裁判所主席調査官にお会いしました。
それは、5年前に私たちが関わった豆君について、お礼のために伺ったのです。
19歳になる豆君(仮名)は現在、名古屋で大工として働いています。
中学3年生のときに覚せい剤使用と売買をした罪で警察に逮捕された少年です。
私たち「小さな声の会」がかかわったのは彼が小学校5年生のときからでした。母親は子どもたちを残して蒸発をし、父親も家に帰らず、食事もろくに与えられていないという環境でした。
また、彼は父親から暴力を受け、心がすさんでいました。私たちはその家庭に食事を届け、子ども達の遊び相手になり、時には勉強も教え、寄り添い励まし続けました。
しかし、非行仲間と付き合うようになり、しだいに万引き、障害、覚せい剤と 犯罪に手を染めていきました。中学生になり、覚せい剤の売買をしたと言う事で逮捕されました。
私たち「小さな声の会」は、彼と彼の家庭に4年間近く関わっていたとのことで、家庭裁判所から意見を求められました。家庭裁判所の見解は少年院送致という厳しいものでしたが、私たちは「愛された経験のない子どもが少年院へ行ったとしてもすさんだ心が治るわけではありません。愛されるという経験を社会の中でさせてください。」とお願いをしました。
担当の調査官は私たちの意見に耳を傾け、今までの支援の実績から信頼をしてくださり、少年院送致をはずし、私たちに保護委託をしてくださったのです。
もちろん、当時の私たちには就労施設も、宿泊施設もありませんでした。それで、日頃お世話になっている仙台の武田牧師に豆君をお願いしました。保護観察の1年間、彼はそこで、はたらく場所を与えられ、また生活支援をしていただき、多くの方たちのご愛を受け過ごす事ができました。もちろん移った当初は、家の中のものを壊したり、火をつけたり、夜中に暴れたりと大変な状況でした。しかし、周囲のクリスチャンの人たちはそのような豆君を受け止め、愛し続けてくださいました。豆君は愛された経験を通して、人を信頼することを覚えました。彼は、心を癒し、立ち直るための機会を与えられたのです。
今、彼は大工として働いています。また、愛する女性がみつかり、近いうちに結婚するという報告も聞いています。豆君は受洗はしませんでしたが、神様の愛は届いたのです。
しかし、豆君の場合は、恵まれたケースです。立ち直るための、十分な「場所と時間と人」を与えられたからです。多くの子どもたちがそれを求めています。又それは、私たちの長年の祈りの課題でもありました。
就労支援施設が与えられたいきさつ
以前、私たち「小さな声の会」が関わったみかさん(当時15歳)は、なかなか仕事に就くことができませんでした。
「ここで働かせてもらえませんか。」
「…今、募集はしていません。」「あなたでは勤まらないと思うから…。」
求人広告を見て訪ね歩いた20軒目の会社も断られました。みかさんは両親に愛されずに育った子どもです。
父親は母親に暴力を振るう事が日常茶飯事でした。父親は風邪で寝込んでいる母親にむかって、「飯を作らないなら死んでしまえ。」と灯油をかけ、火をつけ大やけどを負わせたということもあり、そういったつらい体験を経てきた子どもです。小学校時代から、不良行為をし始め、中学校もほとんど行かず非行仲間とすごすことが多くなり、地域でも煙たがられる存在でした。
ですから、真面目になってもう一度やり直そうという彼女の言葉を誰も信じてくれず、中学校も彼女に仕事を紹介してはくれませんでした。悪かった彼女ですが、神様を信じる優しい人たちに出会って、自分の人生を大切にしようと考え、真面目に仕事を探し始めたのです。しかし、どんなに頭を下げても、仕事はいただけませんでした。
そんな時、ひとりの方がみかさんの祈りに応えてくれ、彼女に仕事の機会を与えてくれたのです。
彼女は変わりました。幼い弟や妹の面倒をみながら、夜遅くまで、3年間1日も休まず働き続けたのでした。病気のお父さんの変わりに働き、生活を支えることができました。それだけではなく、仕事仲間の優しい、おじさんやおばさんに励まされ、支えられることで人を信じていける事をおぼえました。
今、みかさんは社会の中で立派な社会人として働いています。時間のあるときは、昔の非行仲間に神様のメッセージを届けています。
今回、みかさんに仕事を紹介してくださった方から仕事の提供を再びいただく事ができました。それは、ひとりでも多くの子どもたちに就労支援の機会を与えたいと言う思いからだそうです。名古屋市郊外の地に与えられた就労支援施設は、大きな工場の一角をお借りしてのスペースです。また、仕事も切らさず与えてくださいます。
みかさんのように就労の希望がありながら、仕事に就けず、そのことで自分の居場所がない子どもたちが日本全国には大勢います。そんな子どもたちのために、仕事をする場が与えられました。本当に感謝なことです。「生活就労支援センター中部」と名づけたこの場が神様に用いられるようにと祈っています。
【私たちが考える就労支援】
私たちは就労を通して、「愛されているという実感と期待をされるという体験」を持ってもらうことに努めています。そのことで、人を信頼することを覚え、人と協調して生活していく事ができるようになればと願っています。関わる子どもたちひとりひとりの状況がちがうという現実を考えたとき統一したプログラムではなくオーダーメイドの支援の必要性を強く感じていました。そのためには、自前の就労施設が必要だったのです。
祈りの課題
子どもたちに寄り添うスタッフを募集しています。3月から支援をスタートするべく準備をしていますが、現在通所希望者がすでに5名になっています。その子どもたちに24時間365日寄り添い続けるには無償ボランティアでは無理があります。優秀な人材を確保するために、人件費として月20万を必要としています。
子どもたちにやり直すチャンスを下さい。どうぞこのためにご支援とお祈りをよろしくお願いします。
*小さな声の会にご興味、ご関心のある方は、090-7308-8145(青木美久さん携帯)にご連絡ください。
(2006年3月発行No.34掲載)