1999年4月より私は、埼玉県飯能市にあるルーテル教会が運営するミッションスクール聖望学園で聖書科非常勤講師をしています。これから書くことは、非常勤講師としての私感ですので、ルーテル教会及び聖望学園の公的な立場を言い表しているものではありません。そのことをご理解して読んでいただけると感謝です。

はじめに-状況の変化-
1999年4月最初にミッションスクールで経験したショックは、聖書科教師のひとりから「うちはミッションスクールではなく、キリスト教主義学校ですから」と言われたことでした。と言いましてもすぐにこのことばの意味がわかったわけではありません。みなさんも「?」をもって読まれた方が多いのではないでしょうか。このことばに込められた意味は、次のようなものです。「うちは生徒をクリスチャンにするというミッションを担っている学校ではなく、キリスト教精神にのっとって教育を施す学校なんです」という意味です。これが14年前、少子化時代を生き残るためにキリスト教主義私立学校が「進学」に力を入れはじめていく中での状況でした。
けれどもここ数年その状況は、大きく変わり始めています。ルーテル教会は毎年ルーテル系私立小学校、中学校、高校、大学の聖書科関係者を集め、キャンパスでのミッション(生徒をクリスチャンに導くこと)を遂行していくためにどうしたらよいのか話し合いを重ねています。私も、その集まりに数回参加させていただきましたが、とても熱いものを感じました。その中で心に残っていること、及び私たちの教会での事例を紹介します。

①今、ミッションスクールは「教会」とのつながりを求めている
ミッションスクールに身を置いて14年。ミッションスクールが気付き始めていること、また再認識し始めていることは、ミッションスクールにしか届くことのできない場所があり、それが「教会」だということです。一部の有名私立学校を除けば、この少子化時代の中にあって私立学校の生徒募集の頼みは学習塾です。そのような中、ミッションスクールにしか届くことのできない領域があること、それが「教会」であることに気付き始めているのです。
あなたの地元にミッションスクールがあるならば、ぜひあなたの教会から連絡を取り、よい関係を作られると喜ばれることでしょう。聖書の授業を見学させていただいたり、学校の礼拝で説教をさせていただいたり、ぜひ積極的に教会からミッションスクールとの関係を作られるといいと思います。この取組みは、必ず中高生伝道で四苦八苦してきた教会にも新しい流れを造り出すと感じています。

②「キリスト教学校教育同盟」(http://www.k-doumei.or.jp/)の公募を見よう!
「教会」がもう一つ意識してほしいことは、ミッションスクールに良きクリスチャンの教員、職員を送り出すことです。私立学校は、生き残りをかけ良い人材を求めています。また経済的な理由や人材を見定める期間を確保するために非常勤採用も増えています。常勤の教員を考えている若者からすると非常勤採用はマイナスに思えるかもしれませんが、非常勤の期間は教会献身者として教会が訓練し、常勤採用の時には教会からミッションスクールに宣教師を派遣するような思いで、送り出せるとすばらしいでしょう。このようにしてあなたの教会に地元のミッションスクールでの教員、職員がいると、当然生徒もその教会に行きやすいですし、学校側もその教会に生徒を送りやすくなります。キリスト教の「教会」といえども、近年社会問題になる「教会」もあるため、学校も保護者も安心して子どもを送れる「教会」を求めています。そのような意味で、学校の関係者がいる「教会」となると、さらに「学校」と「教会」の良い関係が作りやすくなることでしょう。そのためにも「キリスト教学校教育同盟」のホームページの公募を定期的に閲覧しながら、教会員の方々にぜひ紹介してみてください。

③私たちの教会での取組み
毎年私たちの教会に来るミッションスクールの生徒は延べ約300名です。土曜日の夜から泊まり早朝の礼拝に出る者もいれば、部活を終えて夜の礼拝に出席する者もいます。もちろん午前十時半からの礼拝にも来ます。私が心がけていることは、「教会」という場所に足を踏み入れてもらうこと。そしてその空間で居心地の良さを経験してもらうことです。具体的に話すと宿泊組は、教会の大型スクリーンとプロジェクタでゲーム。教会スタッフもそのゲームに加わるととても打ち解け合い良い関係が作れます。そうなるとまたそのスタッフとゲームをしたいと次回も来ることになります。また日曜日夜の礼拝では早く来た野球部員たちが自分たちで伴奏をし、好きな曲を歌うといったカラオケタイムをします。教会の敷地内でのバスケ、おかしやジュースを提供することもあります。その狙いは、彼らの人生の中に「聖霊なる神さまがおられる空間での居心地良さを体験してもらうこと」です。なぜならその体験が、必ず彼らを再び教会へと引き戻す力になると信じているからです。神にかたどられた人間が、造り主なる神さまからしか得られない居心地良さ、その経験を彼らの人生に刻むことで、「あの居心地良さをもう一度体験したい」と再び教会に戻ってくることを信じています。

さいごに
先にも触れた「キリスト教学校教育同盟」のホームページを見ると、この団体に属する教育機関(小学校、中学校、高校、専門学校、短期大学、大学)の生徒数がまとめられています。その合計人数は、2013年5月時点でなんと344,710人です。神さまは、これだけの人数に上る若者をミッションスクールに入れて下さっているのです。私たち教会が、その神さまの恵みに目を留め、創立者たちの思いを受け継ぎ、知恵を出し合い、彼らがクリスチャンにと変えられていくためのミッションをもう一度教会が取り戻す時、日本の若者伝に明るい光が灯ると確信しています。

(2014年1月No.44掲載)

アメリカの教会から来た高校生と行った授業風景

野球部員たちが出席した礼拝後に

聖書の授業風景

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