昨年3月11日、東日本一帯を襲った巨大な地震と津波。それらは家も土地も町も全て破壊してしまいました。何より愛する親、兄弟、姉妹そして子どもたちの多くをも奪い去りました。
あれから10ヶ月。原発事故で故郷に戻れない人たち、仮設住宅で過ごす人たちなど被災された方たちの辛い気持ちは未だ続いています。
祈る思いばかりでいた私に、福島の地で被災者と共に生きると覚悟を決めた牧師より、心動かされる言葉を頂きました。「被災地で生活する私たちのことを忘れないでほしい。面白がってでもいいから続けて足を運んで欲しい。そして大人に振り回されがちな子どもたちのことを祈り、その子どもたちと関わって欲しい」――その言葉が昨年のクリスマス、私を「祈るだけ」から、「小さな行い」に変えてくれるきっかけとなりました。
クリスマスの大切な使命が、被災地の子どもたちの心にあたたかな夢を、イエスキリストの恵みと愛を届けたい、という思いに膨らんでいきました。アドベントを迎えたある日、仮設のクリスマス会でプレゼントを渡した時の事でした。イエス様をまだ知らない小さな子どもが、「サンタクロースいるのかな?プレゼント届くかな?」とキラキラ輝く目で質問してきました。その目を見た時、あの有名なサン新聞のお話がよみがえってきました。
私は、その子に心を込めて答えました。「サンタクロースは見たことないけど、いるって信じてるよ。だって、クリスマスにサンタさんがいなかったらものすごく寂しい世界になってしまうもの」。そして「自分の見たこと、知ってること、わかることだけが全部じゃないよ。信じること祈ることができたらやさしい気持ちで心がいっぱいになるよ」と続けました。パッと笑顔になったその子の心に、神様の愛が届くことを祈りながら、私は長靴に入った教会からのプレゼントを渡すことができました。小さな私の行いでした。クリスマス会では、私の大好きな絵本「神様からのおくりもの」を通して神様のことを伝えました。皆が生まれる時、神様は一人一人に大切な贈り物を与えて下さっていること。そして、そのままで神様はみんなのことを愛して下さっている事などを伝えました。何か被災地で奉仕できたらと願っていた私に、「大切なことはどれだけ沢山の事をしたかではなく、どれだけ心を込めたか」(マザーテレサの言葉)ということを改めて気付かせてくださいました。
私自身は昨年5月末よりクラッシュという団体に所属し、現在、災害時の子どもの心のケアプログラム、オペレーションセイフの働きに関わらせていただいております。プログラムは、ペンギンのピートの冒険紙芝居を通し、20分ずつの5つのステーション(聖書、紙芝居、ゲーム、クラフト、スナック)で進めていきます。オープニングでは、一日目のテーマ「僕は一人じゃない」を合言葉に、ペンギンのピートを紹介し、詩篇91章4節のみことばをジェスチャーをつけ、皆で覚え、ダンスを交えて楽しく始めます。被災地の子どもたちの心が落ち着き、安心し、楽しむことはもちろんですが、それと同時に子どもたちのリアクションを観察することができます。
昨年の夏休みは、放射能問題にさらされている福島の子どもたちを対象に5日間のプログラムを実施しました。ご存知の通り、福島の多くの子どもたちは早くから県外に移り住み、福島に留まっている子どもは多くありません。その中で、福島の教会でプログラムが実現しました。5日間、毎日10名程の子どもたちが参加してくれました。会場の礼拝堂に足を踏み入れたものの、子どもたちはどこかそわそわした様子でオープニングが始まりました。このプログラムの対象年齢は5~11歳。子どもたちは、スタッフとボランティアのフォローで徐々に安心している子どもらしい笑顔に変わってきました。その後のペンギンピートの紙芝居のお話では、氷が割れてしまったことでピートが両親と離れ離れになってしまいます。ピートはその現実を受け入れ、新しい友達と出会い、新しい明日が来ることを確信して進んで行きます。子どもたちはそのお話に自分の体験を重ねピートと共に考えていくのです。その時、子どもたちの口から出る心の叫びがトラウマケアの第一歩であると思います。3日目のゲームでは、2人一組で障害物リレーをしました。それは目隠しをしたお友達を、もう一人が手をつないで安全にゴールに到着させるゲームです。高学年の子どもが目隠しする事を怖いからと嫌がりました。また、4日目の聖書のステーションでは荒れる海の中でペテロに扮した子供に神様が「来なさい」と命令した時のことでした。ペテロ役の子が
恥ずかしがったのです。しかし、その役を恥ずかしがったのではなく、「水への恐怖心」が先にあったのだ、と感じました。
このプログラムは既に仙台・女川町の集会所で石巻の教会ミニストリーとして始まっています。5回シリーズで3月まで続きます。
一人一人が大切な存在で、そのままの姿で神様に愛されているのだということを被災地の子どもたちに伝えていきたいと思っています。子どもの心に寄り添いながら過ごしたいと思います。