2010年10月、ケープタウンで開かれた第三回ローザンヌ会議で色々なことを学ばせていただきました。その中で、子どもミニストリーに関する分科会で教えられたことについて、まとめさせていただきます。

 

4―14の窓

ルイス・ブッシュ氏(Transform World Connections)は、かつてアジアからアフリカまでを含む東半球において、特に非キリスト教人口が多い北緯10-40度地域での宣教を重視する宣教戦略を提唱し、[10/40Window]と名づけました。その彼が、2009年9月、ニューヨークで開催されたグローバルサミットで新しく提唱したのが[4/14Window]でした。4-14の窓とは、地域的な宣教重点戦略ではなく、4歳から14歳までという年代層へのアプローチの重要性を強調したものです。統計的に見ると、4歳から14歳までの間に救いの経験をする人が、クリスチャン全体の約80% (地域によって75%-84%) と言われています。その比率は、世界中で大きく変わらず、日本でも当てはまると思われます。一方、15-24歳からはキリスト教的価値観から離れる割合が高くなり、教会離れが始まる年代であると言われています。ルイス・ブッシュ氏は4歳から14歳までの年代に焦点をあて、その年代を核としてとらえ、集中的なアプローチが必要であると結論づけました。10/40Window が重要でなくなったということはなく、10/40の地域における4-14歳の若い世代へのアプローチが重要であると強調したわけです。ローザンヌ会議でも、4-14の窓についての再確認がなされ、若い世代に対するアプローチが最優先されるべきではないか、とアピールがなされました。

 

子どもたちによる子どもミニストリー

以前から児童伝道や子どもミニストリーに情熱をもって取り組む団体は少なくありませんでした。今回、ローザンヌ大会で特に強調されたのは、「大人が子どもたちに伝道する」のではなく、「子どもたち自身が友だちに伝道する」「大人はその子どもたちをバックアップする」という原則が確認されたことでした。エペソ4:11-13に書かれているように、子どもたちがキリストの弟子として整えられて、司会、祈り、ゲーム、賛美リーダー、音響、パソコン操作などの奉仕をになっていくように支えようとアピールされました。昔よく用いられたワークのぬりえやフランネルグラフ等は、日常的にゲームや映像等に触れている現代の子どもたちにとっては、退屈に思えてしまいます。新しい時代の子どもたちには、新しいアプローチが必要、と繰り返されました。子どもたちを主の弟子、宣教師として同じクラスのイスラム教、ヒンズー教の子どもたちに影響を与えるように送り出す、という大胆な視点に驚きを感じました。子どもが奉仕に参加するといっても、単に特別賛美など割り当てられた奉仕だけをこなすのではありません。子どもたちが意見を出し、子どもたちが決定権を持ち、子どもたちが実質的にミニストリーを運営していくという方向性はまさに、「全教会から全教会へ」という第三回ローザンヌ大会で用いられたパラダイムシフトのよい例であると思います。

 

家庭における弟子訓練

多くの国の教会で、「子どもミニストリー」「ユースミニストリー」「青年ミニストリー」のように多くのミニストリーが乱立し、忙しすぎる奉仕者が自分の家庭を省みる時間が少なくなって、奉仕者の子どもたちが信仰を継承していないという悲惨な現実が分かち合われました。教会を中心とした宣教から方向転換して、家庭を中心とし、両親が子どもたちの全人的な成長を育み、未信者の家庭にアウトリーチしていくことが基本ではないか、と話し合われました。もともと一番身近な弟子訓練は、家庭において親が生活を共にしながら、子どもたちを主の弟子として育てることである、と親の役割、家庭の重要性が再確認されました。「子どもミニストリー」の分科会の参加者はほぼ子どもミニストリーの奉仕者でしたが、ユースミニストリーの視点、ファミリーミニストリーの視点、女性の視点など、多くの違った分野の複合的な視点が必要であると思いました。世界中の教会の課題と日本の教会のかかえている問題には、意外に共通点が多いのではないでしょうか。

 

50人の子どもに1人以上の奉仕者

このような壮大な子どもミニストリーの拡大のために分かち合われた戦略が1for50(少なくても50人の子どもたちに1人ずつの奉仕者を育てる)でした。神学校などで高い学歴と豊かな経験を兼ね備えているリーダーを育てるというより、毎日の生活で子どもたちと日常的に接している親、日曜学校教師、超教派団体リーダーとビジョンを分かち合い、地域教会のリーダーとして育て、子どもミニストリー奉仕者のネットワークを確立しようと呼びかけられました。そのための六段階のステップとして、①クリスチャンホームの子どもが救われる②クリスチャンホームの子どもが、友だち(未信者の子どもたち)に伝道する③未信者の家族全体と親しくなって導く④子どもたちが全人格的に成長する⑤教会全体による子ども弟子訓練がなされる⑥子どもたちが将来のリーダーとして育てられる、などのステップが分かち合われました。

 

若い世代に対する伝道が急務であることは、既に多くの人々によって指摘されています。一般的に、若い世代というと、中学生、高校生、学生、20代というイメージが強くありましたが、4-14歳の幼児・児童の年代からスタートすべきことは、大切なポイントだと思います。一方、日本の教会に目を向けると、足がかりになるクリスチャンホームの子どもさえいない。親自身が整えられていないので、どのようにして子育てをしていいのかわからない。クリスチャンホームの子どもたちも、クリスチャン同士仲よくなり、未信者の友だちに伝道できない。両親ともクリスチャンの家庭が少なく、強い影響力が発揮できない、などの課題も多くあると思われます。CSの子どもたちが成長し、将来のリーダーとして立て上げられるためには、クリスチャンホームの親の役割、教会の子どもスタッフの役割が益々重要になってくることは確実だと言えるでしょう。

(2014年1月発行No.44掲載)

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